糖尿病

糖尿病

 糖尿病は、生活習慣病・慢性疾患の代表疾患の一つです。 大抵の患者さんは自覚症状がなく、健康診断等で指摘され診断されます。 日本人の糖尿病の大部分は中年以降に発症し、背景に遺伝も関与するとされる2型糖尿病です。
  糖尿病がなぜ悪いかといいますと、一番の問題は動脈硬化の強い危険因子であることです。 ごく細い動脈硬化病変によって手や足の神経障害(ジンジンする痛みや感覚の鈍麻),眼の網膜症,腎糸球体病変を起こし、 長期的には大きな動脈の硬化を起こし脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。他にも感染症に弱くなったり、 血糖が非常に高くなるとケトアシドーシスを起こして強い全身倦怠に陥り入院が必要になります。
 糖尿病の原因はインスリンの分泌が悪くなるためと思われがちですが、インスリンに反応して糖を取り込む組織の反応性が低下する(インスリン抵抗性)病態も重要です。 生活習慣病・慢性疾患であることから、糖尿病は完治が難しく付き合っていく病気です。
  治療の第1歩は食事と運動療法です。適切な量の食事を知っていただき、運動をしてインスリン抵抗性の改善を図ります。 これで充分な効果がないときに、治療の助けとして薬剤の治療を開始します。 糖尿病治療薬には、@インスリンの分泌を促進あるいは分解遅延によってインスリン量を増やす薬剤、 A消化管から等の取り込みを遅らせる薬剤、 B肝臓での糖新生を抑制する薬剤、 Cインスリン抵抗性を改善する薬剤、 Dインスリンそのものを薬としたもの等があります。 これらを適切に使って治療を進めてまいります。

  高血糖を指摘された方、糖尿病が気になる方はどうぞ一度受診してみてください。



糖尿病の3大合併症の共通点とは


 糖尿病といえば血糖が高くなってしまう病気なのですが、大げさに言えば、人間は血糖が多少高いだけでは(500mg/dLを超えるほど高い場合は別です)たいして困りません。 糖尿病は血糖よりも、その合併症が厄介なので結局血糖をコントロールしましょうと言っているのです。

 3大合併症とは、以下のものを指します。
 神経症:手足がじんじんびりびり痺れたり、温度の知覚が悪くなったり、
     自律神経障害のため便秘になったりする
 網膜症:眼の網膜出血のため、突然視力をなくす
 腎症 :腎臓の血液をろ過して老廃物を尿として捨てる機能が低下する
     日本の透析患者さんの原因疾患の第一位は糖尿病です

 これらの合併症は一見何の関連もないように見えますが、はっきりした共通点があります。それはどの組織でも毛細血管のように細い動脈が重要な役割を持っていることです。 神経では、その繊維が長いものの末端を栄養している動脈が非常に細く、眼の網膜もそこに来ている動脈は非常に細いものです。

腎臓に至っては、腎臓に入った動脈(腎動脈:これは太い)はどんどん枝分かれをし、最後に毛細血管ほどの太さの動脈が糸玉のような組織(糸球体)を多数(100万個)鈴なりに作り、そこで血液をろ過し原尿を生成しています。

 血糖が高いと、これ等ごく細い動脈に動脈硬化を起こしやすくなり、神経には栄養がいきわたらなくなって機能障害を起こし、網膜では出血をしてそれがものを見る焦点となる黄斑にかかってしまうと視力低下を起こし、 腎臓に至っては、血液をろ過することができなくなり腎機能低下を引き起こします。

 動脈硬化ですので一度なってしまうと元に戻すのが難しく、しかもなってしまうまで何の痛みも不便も感じません。糖尿病治療を納得して受け入れていただく難しさです。

しかし微小な血管に起った動脈硬化は、やがて大血管にも起こっていくことは想像していただけると思います。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクといわれる所以です。

平成 30年9月17日
並木充夫・加藤由紀子



糖尿病の治療方針が変わってきています


 数年前まで、糖尿病といえば合併症(神経症、網膜症、腎症)を進行させないため、とにかく血糖コントロールをよくしましょうと言われてきました。 しかし大規模な臨床試験での結果を見てみると、血糖を低くコントロールしただけでは患者さんの健康寿命は予想のように延びないことが分かりました。 上記3大合併症の先にある心血管イベント(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞)の発症が統計的に有意なほど抑制されなかったといいます。

結果を受けてさらに研究が進められ、現在の見解としては、糖尿病と診断された方は、血糖コントロールばかりでなく血圧、コレステロールも年齢や基礎疾患に合わせて通常の方よりより厳しく管理し、 なおかつウォーキング等の有酸素運動を継続的に行うと上記健康寿命は延ばせる、とされています。この考えに沿った小規模な臨床試験が幾つかの施設から報告され、 確かに心血管イベントは減るとのことです。

 当院にも糖尿病の患者様は多数いらっしゃいます。こんなことを聞かされるとやれやれと思うかもしれません。しかし考えてみますと、以前からあちこちでたくさん言われている生活習慣病の対策を、 糖尿病と言われたら真剣に考えてくださいよ、といっているだけですよね。血糖コントロールにしろ、血圧・コレステロールのコントロールにしろ、今は使いやすい薬が多数出ております。 暴飲暴食や、間食を食べすぎないといった基本的生活習慣の改善は必須ですが、足りない分は薬を使ってコントロールしていけば決して越えがたいハードルではないと思います。 糖尿病は、治すというよりも付き合っていく、いわば体質のようなものですので、医療機関とうまく連携して健康維持を図って下さい。

 当院としては上記の流れに沿い、糖尿病の患者様のコレステロールと血圧のモニターは、それらの薬を飲まれているいないにかかわらず積極的にしていく方針です。

平成 30年9月17日
並木充夫・加藤由紀子

なみき内科内科・リウマチ科・糖尿病内科

〒665-0865
兵庫県宝塚市寿町8-24
TEL 0797-87-8739