内科的リウマチ治療

関節リウマチの治療法は大きく変わっています


関節リウマチとは
 手や足の関節、肘、肩、膝を含む多くの関節に痛み(疼痛)と腫れ(腫脹)、熱感を伴う関節炎を起こす病気です。関節炎の主体は、関節を覆っている滑膜という組織が障害を受けて増殖するものです。放っておくと関節に破壊的な障害をもたらし、関節炎にとどまらず関節の変形や脱臼を起こし生活の質を落とします。
日常生活の上で障害としてよく見られるのは、
 ・身支度の上でボタンをかけるような細かい動作がし難くなります。
 ・就寝や起床の動作など立ったり座ったりがし難くなります。
 ・茶碗やコップを口元に運ぶのが辛くなります。
 ・歩きにくくなります。
 ・タオルで背中をふくなど、全身を洗う動作がしにくくなります。
 ・腰をかがめてものを拾う動作が辛くなります。
 ・ビンや缶の蓋を開けにくくなります。
 ・車の乗り降りが辛くなります。


関節リウマチの原因は
 本来外敵から身を守るために備わっている免疫のシステムが、自分の組織(関節滑膜)を間違って攻撃してしまう自己免疫疾患です。なぜ間違えて自分の組織を攻撃してしまうかについて、現在はある種のウイルス感染が原因で、そのウイルスを排除しようとした免疫が自分の組織を攻撃してしまうのだろうと考えられています。このような免疫の誤作動の背景には、遺伝的な要素も含まれています。また喫煙をしている方の関節リウマチは症のリスクは、していない人よりも有意に高いことが知られております。


その診断法は
 関節炎を起こしている関節の数,期間,リウマチ因子を持っているか,画像上の変化はみられるか,関節炎に対応した炎症反応の上昇がみられるか、等を関節所見,画像所見,採血検査所見から総合的に診て診断してまいります。よく「自分はリウマチ因子が陽性だから関節リウマチだ」と言われる方がおられますが、従来のリウマチ因子が陽性の方は日本人の約5%(20人に1人)もいるのに対し、関節リウマチを発症している方は、約0.6%(170人に1人)にすぎません(しかもリウマチ因子陰性のリウマチ患者さんもいらっしゃいます)。リウマチ因子陽性であることは、診断のための一つの根拠になるだけです。
従来1987年から使われてきた分類基準に沿って診断してきましたが、下記のように関節リウマチに効果のある新薬が次々に登場し、より早期の関節リウマチを診断することが求められるようになり、現在では2010年にアメリカリウマチ学会で提唱された分類基準が広く使われています。


従来の治療法は
 15年ほど前までの治療法は、痛み止めと炎症を抑えるステロイドホルモン、これに効果が十分とは言えない免疫調整剤と称する抗リウマチ薬が使われてきました。その効果は限定的で、痛みに対する対症療法がメインでありました。また多量のステロイドホルモンの長期使用は、関節の障害を進行させてしまうことも分かり、関節リウマチは、長らく治療の難しい病気とされてきました。


最近の治療法は
 2000年の前ごろから、メソトロキサートが関節リウマチに有効であることが言われるようになると、世界中でその効果が確認され、今ではリウマチ治療の基軸となる薬(アンカードラッグ)となっております。この薬の登場により、多くの患者さんの関節炎のコントロールは飛躍的によくなりました。更に2004年からは、傷害の起こっている関節でその促進をしている悪玉物質(サイトカイン,特定受容体)を狙い撃ちする最先端科学の医薬品(生物製剤)が登場し、リウマチの関節障害は進行を止められるとまで言われるようになりました(パラダイムシフト)。これらに加えて、従来の抗リウマチ薬、新しいタイプの抗リウマチ薬を組み合わせて今日のリウマチ治療はされるようになっております。
数多く出てきた関節リウマチの治療薬の使い方についても臨床的な検討が続けられ、関節リウマチと診断された上で、メソトロキサートを使用することに支障のない患者様にはまず積極的に導入、効果をきちんと見極めて薬の増量を行い、それでも効果不十分なときには生物製剤の導入も考慮していく方向性が出来上がっております。


効果の高い薬ということは
 副作用の問題もクローズアップされてきております。関節リウマチは免疫異常に原因がありますので、治療薬は免疫抑制的な作用のものがほとんどです。通常の風邪や肺炎に通常よりも注意が必要になることはもちろん、知らない間に体内に侵入し、普段はおとなしく共生している結核菌や、B型肝炎ウイルスにも場合によって注意,対策が必要です。また抗生剤では直すことのできない、難治性の肺炎を引き起こす可能性もあります。更に肝臓や腎臓に障害を持っている方は薬の副作用が出やすく、使用できる薬に制限が生じます。


内科のリウマチ専門医とは
 これまで説明させていただきましたように、 関節リウマチは免疫の誤作動によっておこる病気です。この病態に対応した画期的な薬の相次ぐ登場の結果、リウマチは早期発見早期治療が大切と考えられるようになり、それに合わせて診断基準までが変わってきております。関節に重大な障害を起こしてしまう前に、効果の高いお薬で関節リウマチをコントロールするするのですから、関節リウマチは関節に障害を起こす整形外科的な疾患でありますとともに内科的な免疫疾患であります。当院は内科のリウマチ専門医、また薬剤師としての立場から、副作用に目を配ったリウマチ治療を心掛けております。



関節リウマチ・膠原病を発症、あるいは心配されて
受診をされる患者様へ


 開院してほぼ5年間が過ぎ、関節リウマチ・膠原病をすでに発症されている患者様、それらの病気を心配されている患者様に多数受診していただいております。

 すでに診断されている患者様の多くは、住所が当院に近く通うのに便利なため、糖尿病や高血圧、甲状腺の病気など他の内科疾患を持たれ同時に診療を希望されてお出でになられます。 時には大病院での待ち時間が長いため、待たないでも診療を受けられる(?)ことを期待して来られる方もいるように思います。当院では、それぞれの患者様の希望に沿うよう、対応をしてまいります。

お願いとしては、できるだけ前の主治医からの紹介状を持ってきていただきたいです。身体所見、検査データを取らせていただきますと、患者さんがご自身で理解し語られる病状とは異なることが大変に多いです。 リウマチも含め膠原病は、発症時の診断とその根拠や治療歴がとても大切で、紹介状がありますと効率よく現状を把握することができます。お薬手帳と一緒に、できれば紹介状もお願いいたします。

 関節リウマチ・膠原病を心配されて当院を受診される方は、最近の手指や手首・肘・肩・膝や足首・足趾関節の痛みや腫れ・しびれ、朝の手指のこわばり等を心配されて受診される方が大部分です。 関節が痛ければリウマチ・膠原病かといえばそんなことはなく、変形性関節症や頚椎症などの整形外科的な疾患の方も多いです(ただし両者の合併はあり得ます)。 当院では、現在の関節痛, 関節炎が関節リウマチからのものかどうかを先ずお教えできるように、問診、身体所見、レントゲン、採血検査、場合によっては関節エコー, MRI検査をしております。 膠原病に関しましては、診察や検査データの中に臓器病変や免疫異常がないか、最初は基本的な部分のみを検査に入れさせていただいています。結果を見て、さらに詳細な検査が必要でしたら、 追加の検査をさせて頂きます。膠原病と言われる疾患は20以上あり、多くの特殊なマーカーが知られておりますが、検査料の高いものが多く必要最低限を心がけて検査をしております。

 疾患によりましては当院で対応しきれないものもございます、この場合は患者さんに説明・相談をし、宝塚市立病院を始め、適切な病院へ紹介させていただいております。

平成 30年9月17日

なみき内科内科・リウマチ科・糖尿病内科

〒665-0865
兵庫県宝塚市寿町8-24
TEL 0797-87-8739