開業奮闘記

その8

 9月までで市立病院は退職しました。しかし一時の解放感を味わう余裕もなく、電子カルテに自分なりの作り込みをすることに頭を悩ませ(私はパソコンは得意じゃありません)、毎日様々な方と面談の繰り返しで多忙でした。その中で自分の医院運営の理念についてボツボツと考えておりました。今後長きにわたって、医療スタッフの方たちと共に地域医療を提供していくには、共通認識となる理念は大切です。私は「皆様の健やかな生活を支える健康管理の水先案内人、日常生活に溶け込んで、皆様に安心を提供できる地域医療の灯台守」としました。地域の方にとって、病気になった時ばかりでなく、普段の健康な生活のアドバイザーでありたい。健康上の何かがあった時、とりあえず当院に来てもらえば何らかの対応をする医院であると皆様に認知していただけるようになりたい、との思いを込めました。

その7

 退職前は、担当した患者さんの引き継ぎ業務で多忙でした。患者さん一人一人の診療記録を整理し、引き継いでいただく先生に経過と問題点を分かりやすくまとめた文章を残していきました。「立つ鳥あとを濁さず」です。また私の医院に移っていただき診療を継続する患者さんはじめ、これを機に自宅近くのかかりつけ医に紹介を希望される患者さんの紹介状を作りました。当然中には未解決の問題を持つ患者さんもおられ、途中で担当医を代わることに、患者さんにも引き継いでいただく先生にも申し訳ない思いでした。

その6

 候補地の地主さんとの交渉もまとまり、計画が軌道に乗ってしまうと、建設関連の方々、看板屋さん、広告屋さん、電子カルテ他種々医療機器関連の方々、薬剤関連の方々、税理士さん、イラストレーター、警備等様々な業種の方が協力して下さり、半年後には空地であった土地に忽然と新しい医院ができ上がっておりました。その間私はというと、勿論各業者の方との話し合いをして計画を推進しましたが、医院の中身(診療と運営)をどうするかについて、コンサルのOさんとSkypeを使って週一度話し合いを繰り返しておりました。

その5

 お世話になっている市立病院を辞めることに関しては、早くから関係する先生方に意向を伝え、相談をしておりました。私の所属する科は慢性的な人手不足ですから、自分が退職することは、病院にとどまらず関連する大学病院の先生方にも影響することが分かっていました。しかし自分の年齢と体力のことを考え、医院を立ち上げた上で新たに地域医療で頑張っていくことを考えると、のんびりとは構えていられない状況でもありました。有難いことに諸先生方のご理解を得ることもでき、退職後のバックアップも頂けることになり、開業地が決まってからは、その準備に全力を傾けることができました。関連の諸先生方には、本当に感謝いたしております。

その4

 縁というものはあると思いました。コンサルのOさんからは、今時自宅近くに開業地を求めてそう易々と見つかるものではなく、もっとずっと広いエリアで探さないと時間が経つばかり、とアドバイスを受けていました。自分でも近隣を見て回り、確かに難しいと思いだしたころ、まったく偶然に自分の通勤ルートにほど近い寿町郵便局近辺に候補地があることに気付きました。その場所は、私が初めて宝塚にやって来て住んだ独身寮のすぐ近くでもあります。縁を感じました。さっそくOさんにも相談、了解を得て計画が具体的に動き出しました。

その3

 Oさんと契約をしてすぐに開業かと言うと、そんなに簡単なものではありませんでした。まず自分がどのようなスタイルで医院を立ち上げるかを具体化できなければ、立地も決まりません。私は、風邪引きさんや高血圧・糖尿病などを扱う一般内科を軸に専門にしてきたリウマチ膠原病診療もする医院運営の方針を決め、駅前のような医院密集地よりも郊外型の診療所ができないか、考えていくことにしました。宝塚市内を念頭に置きつつ、それではあまりに地域が狭いので、近隣の候補地になりそうなところを、休日のドライブがてらにブラブラ見て回って時間が過ぎて行きました。

その2

 コンサルタントのOさんと面談をした時のことはよく覚えております。私が一つ聞けば百倍返しのような回答を滔々と話し続けるのに圧倒されました。話の中のユニークな視点と、何よりもこの仕事が好きでやってる熱意が伝わり、もう後戻りできない心境になってしまいました。病気がちだった自分の幼いころ、季節の変わり目になれば風邪を引いて連れて行かれた近所の「お医者さん」に今度は自分がなる、と具体的な将来のイメージができ上がった日でありました。

その1

 開業を考えだしたころ、何をどのようにしていいかわからず、街の開業セミナーなるものを聞きに行ってみたり、インターネットで調べてみたりしていました。私の意思も固まっていませんので、本当にチラチラとのぞく程度でしたが、開業をするならコンサルタントについてもらわないと自分一人ではとても無理、ということだけは理解しました。そんな中で、以前からちょっと気になるホームページを見つけてました。何かやたらに情報満載で、私の気になることはたくさん書いてあるものの、それ以上の情報が欲しければこちらをクリックして入会をしてください、というお決まりの誘導もめっちゃあちこちに設定されているページでした。入会などしてしまうと後がうるさいのは分かりきっているので、1年近くは放置していたと思います。しかし勤務病院で自分の上司が倒れ、自分の居場所が一時なくなるハプニングを契機に開業を決意、ホームページの向こうにどのような人がいるか分からない怖さを感じながら、例の「入会」をクリックしました。

なみき内科内科・リウマチ科・糖尿病内科

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